自力によらない追い出し方法の考察及び、賃借人の信用担保

現在の状況

家賃保証会社の役割

本テーマである「自力によらない追い出し方法の考察及び、賃借人の信用担保」の追い出しとは令和4年12月12日に最高裁判所で判決された「消費者契約法12条に基づく差止等請求事件」において、家賃保証会社が賃貸住宅の賃貸人と賃借人等との間の賃貸借契約に関し、賃借人が家賃保証会社に対して賃料債務等を連帯保証することを委託し、家賃保証会社が賃貸人に対して当該賃料債務等を連帯保証すること等を内容とする契約の条項のことを指します。この条項は「追い出し条項」と呼ばれています。この節では家賃保証会社の役割について記述します。平成28年10月に国土交通省住宅局から公開された資料によれば「家賃債務保証業とは、賃借人の委託を受けて、当該賃借人の家賃の支払いに係る債務を保証することを業として行うもの。賃貸借契約の約97%において、何らかの保証を求めており、約6割が家賃債務保証会社を利用。近年、高齢単身世帯の増加や人間関係の希薄化等を背景として、家賃債務保証会社の利用が増加。」となっています。また、賃貸住宅の所有者についてアンケートでは、入居を断る理由について「家賃の支払いに対する不安」と答えた人が57.3%にも及びました。それ以外には「住宅の使用方法に対する不安」が33.5%、「入居者以外の者の出入りへの不安」が25.3%となりました。住宅確保用配慮者の入居に対する賃貸住宅の所有者の意識は高齢者に対して約6割、障害者たいしては約7割、子育て世帯に対しては約1割、外国人に対しては約6割が拒否感を示しており、「外国人は不可」や「生活保護受給者は不可」といった入居制限をしている賃貸住宅の所有者がいるのが現状です。民間の家賃債務保証の審査状況では、年齢別では高齢者が通りにくく、属性別では、生活保護受給者や外国人等が通りにくい傾向があります。収入の差は年齢や属性の差と比べ、審査に影響は大きくありません。一般的な家賃債務保証サービスは入居者が家賃債務保証会社に保証料を支払うことで、家賃滞納時の立替え等に関する保証を行います。契約時の保証料は、初回時月額賃料の50%、以後一年毎に1万円と設定している事業者が多です。以上から、家賃保証会社は賃借人から連帯保証することを受託し、賃貸人と保証契約を結ぶことで、住宅確保要配慮者の中でも特に低所得者が賃貸住宅を賃借しやすくするという社会的に役割があると考察されます。

自力救済が禁止される理由

令和4年12月12日に最高裁判所で判決された「消費者契約法12条に基づく差止等請求事件」では追い出し条項が認められませんでした。これは自力救済が禁止されているからです。追い出し条項が認められなかった理由の詳細については第二章に記述します。この節では自力救済が禁止される理由について述べます。第一に民法には「自力救済の禁止」について明文されていません。ただし、「自力救済の禁止」の手掛かりとなる条文は民法に存在します。民法第四百十四条一項には以下ののように記されています。「債務者が任意に債務の履行をしないときは、債権者は、民事執行法その他強制執行の手続に関する法令の規定に従い、直接強制、代替執行、間接強制その他の方法による履行の強制を裁判所に請求することができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。」また、民法二百条一項には「占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。」と記されています。他にも、昭和40年12月7日最高裁判例では「私力の行使は、原則として法の禁止するところである」と判断しました。さらに、私力の行使ができる例外になるのは「権利に対する違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が存する場合においてのみ、その必要の限度を超えない範囲内で、例外的に許されるもの。」と判断しました。上記の内容から自力救済が禁止されているということは理解できます。しかし、なぜ司法は「権利に対する違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が存する場合においてのみ、その必要の限度を超えない範囲内で、例外的に許されるもの。」以外の自力救済を禁止したのかまでは理解できません。そのヒントとなるものは日本国憲法第十四条の「平等原則、貴族制度の否認及び栄典の限界」にあると考えました。一項には「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」と記されています。二項には「華族その他の貴族の制度は、これを認めない。」と記されています。三項には「栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。」と記されています。つまり、「同一の違法行為をしたものは同一の罰則を受ける」と解釈することができます。次に、日本国憲法第十四条に触れずに自力救済が認められるということができるのかについて考察します。結論は「できない」となりました。その理由は経済力や体力に優れた人が自分の力で解決しやすくなる一方、そうでない弱者が不利になるからです。例えば、盗まれた自転車を自力取り返すには相手よりも強い力が必要です。そのような世界は力がある者は力がない者から窃取するするのが合理的となります。ゆえに自力救済が禁止されているのです。

低所得者が直面する課題と行政の対応

住宅セーフティーネット法では、居住に課題を抱える人を「住宅確保要配慮者」と定義しています。「住宅確保要配慮者」の具体例としては、低所得者、高齢者、障害者、多世帯、多子家庭などが挙げられます。しかし、第一章・第一節で記述したように家賃保証会社は賃借人から連帯保証を受託し、賃貸人と保証契約を結ぶことで、住宅確保要配慮者の中でも特に低所得者が賃貸住宅を借りやすくするという社会的役割を果たしていると考えられます。そのため、この節では住宅確保要配慮者の中でも特に低所得者についての住宅確保の課題と行政の対応について記述します。厚生労働省と国土交通省が共同で公開した「居住に課題を抱える人(住宅確保要配慮者)に対する居住支援について」の資料では、現状の課題として次のよな点が挙げられています。「低家賃の住宅が少なく、住宅確保要配慮者には民間賃貸住宅において入居拒否傾向があること」です。この問題を解決するには住宅確保要配慮者の入居を拒まない低家賃の住宅の確保が必要です。具体的な行政の取り組みとして、住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度を導入しました。これは賃貸人が都道府県等に対して、住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録を申請することができる制度です。この制度により、賃貸人は住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録を申請することができ、都道府県等は住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録を受け付けることができます。また、住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録を受け付けた都道府県等は、住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録を公表することによって、住宅確保要配慮者に情報提供をしています。この登録を後押しするために、国や地方自治体等は賃貸人に対して改修費や、家賃低廉化の補助、改修費の融資を行っています。また、家賃保証会社に対しては家賃債務保証料の補助を行っています。住宅確保要配慮者に対する直接の支援としては、住居支援協議会に入っている宅地建物取引業者、賃貸住宅管理業者、家主等からなる不動産関係団体や、居住支援法人、社会福祉法人、NPO等からなる居住せ円団体、住宅部局、福祉部局からなる地方教協団体が入居支援等を行っています。これらの取り組みによって、住宅確保要配慮者がより入居しやすい低家賃の住宅の確保を目指しています。以上のことから、低所得者が直面する課題とは低家賃の賃貸住宅が不足していることで、その解決策として住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度とそれを後押しするため、補助金等により低家賃の賃貸住宅の確保を行っていることがわかります。

追い出し条項

追い出し条項の概要

本節では本研究のテーマを「自力に寄らない追い出し方法と賃借人の信用担保」と決めたきっかけとなった一般的には追い出し条項の概要及び、大阪地方裁判所の判断、大阪高等裁判所の判断、過去の類似の最高裁判例について記述します。追い出し条項は二つの条項からなります。一つ目は「賃貸住宅に係る賃料債務等の保証委託及び連帯保証に関する契約書中の、賃料債務等の連帯保証人は、賃借人が支払を怠った賃料等及び変動費の合計額が賃料3か月分以上に達したときは、無催告にて賃貸人と賃借人との間の賃貸借契約を解除することができる旨を定める条項」であり、二つ目は「賃貸住宅に係る賃料債務等の保証委託及び連帯保証に関する契約書中の、賃料債務等の連帯保証人は、賃借人が賃料等の支払を2か月以上怠り、連帯保証人が合理的な手段を尽くしても賃借人本人と連絡がとれない状況の下、電気・ガス・水道の利用状況や郵便物の状況等から当該賃貸住宅を相当期間利用していないものと認められ、かつ当該賃貸住宅を再び占有使用しない賃借人の意思が客観的に看取できる事情が存するときは、賃借人が明示的に異議を述べない限り、これをもって当該賃貸住宅の明渡しがあったものとみなすことができる旨を定める条項」です。大阪地方裁判所はこの二つの条項の内「賃貸住宅に係る賃料債務等の保証委託及び連帯保証に関する契約書中の、賃料債務等の連帯保証人は、賃借人が支払を怠った賃料等及び変動費の合計額が賃料3か月分以上に達したときは、無催告にて賃貸人と賃借人との間の賃貸借契約を解除することができる旨を定める条項」を消費者契約法10条にいう「消費者の利益を一方的に害するもの」には当たらないとして、無効な条項ではないと判断しました。その一方で、「賃貸住宅に係る賃料債務等の保証委託及び連帯保証に関する契約書中の、賃料債務等の連帯保証人は、賃借人が賃料等の支払を2か月以上怠り、連帯保証人が合理的な手段を尽くしても賃借人本人と連絡がとれない状況の下、電気・ガス・水道の利用状況や郵便物の状況等から当該賃貸住宅を相当期間利用していないものと認められ、かつ当該賃貸住宅を再び占有使用しない賃借人の意思が客観的に看取できる事情が存するときは、賃借人が明示的に異議を述べない限り、これをもって当該賃貸住宅の明渡しがあったものとみなすことができる旨を定める条項」については、家賃保証会社が賃借人の物件に対する占有を排除することは自力救済に当たり原則として不法行為に該当することになるため、消費者契約法8条1項3号に該当するため無効と判断しました。その後の控訴審で大阪高等裁判所は「賃貸住宅に係る賃料債務等の保証委託及び連帯保証に関する契約書中の、賃料債務等の連帯保証人は、賃借人が支払を怠った賃料等及び変動費の合計額が賃料3か月分以上に達したときは、無催告にて賃貸人と賃借人との間の賃貸借契約を解除することができる旨を定める条項」については第一審の大阪地方裁判所と同じく、消費者契約法10条にいう「消費者の利益を一方的に害するもの」には当たらないとして、無効な条項ではないと判断しました。その一方で、「賃貸住宅に係る賃料債務等の保証委託及び連帯保証に関する契約書中の、賃料債務等の連帯保証人は、賃借人が賃料等の支払を2か月以上怠り、連帯保証人が合理的な手段を尽くしても賃借人本人と連絡がとれない状況の下、電気・ガス・水道の利用状況や郵便物の状況等から当該賃貸住宅を相当期間利用していないものと認められ、かつ当該賃貸住宅を再び占有使用しない賃借人の意思が客観的に看取できる事情が存するときは、賃借人が明示的に異議を述べない限り、これをもって当該賃貸住宅の明渡しがあったものとみなすことができる旨を定める条項」については物件が明け渡されたとみなされることで、賃借人が明け渡しを実際に行う義務がなくなり、さらなる賃料の負担もなくなるため賃借人の利益にもつながり、消費者契約法10条の「消費者の利益を一方的に害するもの」には当たらないと判断しました。次は本件と類似する過去の最高裁判例である昭和43年11月21日判決について記述します。この裁判では「家屋の賃貸借契約において、一般に、賃借人が賃料を1か月分でも遅滞したときは催告を要せず契約を解除することができる旨を定めた特約条項は、賃料が約定の期日に支払われず、そのため契約を解除するに当たり催告をしなくてもあながち不合理とは認められないような事情が存する場合に、無催告で解除権を行使することが許される旨を定めた約定であると解するのが相当である旨を示しました。また、公営住宅法では事業主体が公営住宅の明け渡しを請求できる場合の一つに「入居者が家賃を3月以上滞納したとき。」を挙げています。以上から3か月分以上の家賃滞納をした場合は契約の解除や明け渡しの請求ができると考えられます。

追い出し条項が認められない理由

本節では「消費者契約法12条に基づく差止等請求事件」の最高裁判決を元に追い出し条項が認められない理由について記述します。1章2節で記述したように日本では自力救済が認められていないため追い出し条項が認められませんでした。最高裁判所は追い出し条項の一つ目の「賃貸住宅に係る賃料債務等の保証委託及び連帯保証に関する契約書中の、賃料債務等の連帯保証人は、賃借人が支払を怠った賃料等及び変動費の合計額が賃料3か月分以上に達したときは、無催告にて賃貸人と賃借人との間の賃貸借契約を解除することができる旨を定める条項」については「連帯保証債務の履行をした場合、賃貸人と賃借人との間の債務は消滅するため、家賃滞納を理由に賃貸借契約を解除できない。」と判断しました。二つ目の「賃貸住宅に係る賃料債務等の保証委託及び連帯保証に関する契約書中の、賃料債務等の連帯保証人は、賃借人が賃料等の支払を2か月以上怠り、連帯保証人が合理的な手段を尽くしても賃借人本人と連絡がとれない状況の下、電気・ガス・水道の利用状況や郵便物の状況等から当該賃貸住宅を相当期間利用していないものと認められ、かつ当該賃貸住宅を再び占有使用しない賃借人の意思が客観的に看取できる事情が存するときは、賃借人が明示的に異議を述べない限り、これをもって当該賃貸住宅の明渡しがあったものとみなすことができる旨を定める条項」については「賃借人は建物に対する使用収益権が一方的に制限されることとなる上、建物の明け渡し義務を追っていないにもかかわらず、賃貸人が賃借人に対して建物の明け渡し請求権を有することとなる。これは法律に定める手続きに寄ることなく実現されたのと同様の状態に置かれているため、著しく不当である。」と判断しました。

追い出し条項の否認による影響

本節では追い出し条項が認められないことにより、低所得者の住宅確保にかかる影響について考察します。追い出し条項が認められないことにより、家賃保証会社は賃借人から連帯保証することを受託し、賃貸人と保証契約を結ぶことで、住宅確保要配慮者の中でも特に低所得者が賃貸住宅を賃借しやすくするという社会的役割を果たすことが難しくなると考えられます。なぜなら、家賃滞納のリスクをより高く見積もるインセンティブが働き、賃借人になろうとする人の支払い能力や信用状況をより厳しく審査することにつながるからです。その結果、家賃保証料が引き上げられたり、いままでは賃借人になることができた人が賃借人になることができなくなることが予想されます。そのような状況は特に低所得者層にとって大きな経済的負担となります。それにより、低所得者層が安定した住居を確保する機会が少なくなり、社会的にさらなる格差を生む要因となる可能性があります。以上から家賃保証会社は賃借人から連帯保証することを受託し、賃貸人と保証契約を結ぶことで、住宅確保要配慮者の中でも特に低所得者が賃貸住宅を賃借しやすくするという社会的役割を果たすことが難しくなると考えられます。このような状況を回避するには、さらなる家賃保証会社の負担軽減や、公的支援による保証制度が必要になると考えられます。

家賃滞納者への対応

家賃滞納者への一般的な対応

本節では家賃滞納者への法的手続きによる対応方法について記述します。政府広報オンラインの記事によると家賃滞納などのお金の未払いに関するトラブルの解決方法が紹介されています。まずは「支払督促」を行います。「支払督促」は、貸したり立て替えたりしたお金や家賃、賃金などを相手方が支払わない場合に、申立人側の申立てのみに基づいて、簡易裁判所の書記官が相手方に支払いを命じる略式の手続きです。紛争の対象となっている金額にかかわりなく、金銭の支払いを求める場合に利用できます。書類審査のみで行われる手続きで、利用者が訴訟などのように裁判所に出向いたり、証拠を提出したりする必要がありません。支払督促の手数料は、訴訟の半分です。例えば、100万円の支払いを求める場合、裁判所に納める手数料は、民事訴訟では10,000円ですが、支払督促では半分の5,000円になります。申立人の申立てに基づいて、裁判所書記官がその内容を審査し、相手方の言い分を聞かないで金銭の支払いを命じる「支払督促」を発付します。発付された支払督促を送っても、相手方がお金を支払わず、異議申立てもしない場合、申立人は支払督促に対して仮執行宣言を発付してもらい、強制執行を申し立てることができます。強制執行が受理されると給料や預金などの財産を差し押さえることができたり、執行官が強制的に建物の明け渡しを行います。申立人にとっては、支払督促の手続きは、詳細な証拠集めが不要で支払督促申立書に必要事項を記入して簡易裁判所に提出すれば済むなど、民事訴訟や少額訴訟、民事調停に比べて簡単に行うことができます。相手方が「支払督促」を受領してから2週間以内に異議申し立てがあった場合、「民事訴訟」に移ります。「民事訴訟」は裁判官が法廷で双方の言い分を聴いたり、証拠を調べたりして、最終的に判決によって紛争の解決を図ります。60万円以下の金銭の支払いを求める場合には「少額訴訟」を利用することができます。1回の審理で判決が言い渡されます。その他の方法として、「民事調停」があります。「民事調停」は話し合いで円満な解決を図る手続きで、裁判所の調停委員会のあっせんにより、話し合いによる解決を図るもので、調停で合意された内容は判決と同様の法的効力が生じます。

過去の滞納と誓約書を用いた家賃保証

本節では、追い出し条項の否認と家賃保証会社が賃借人から連帯保証することを受託し、賃貸人と保証契約を結ぶことで、住宅確保要配慮者の中でも特に低所得者が賃貸住宅を賃借しやすくするという社会的役割を果たすことの両立を実現する方法の提案をします。それは「過去の滞納と誓約書を用いた家賃保証」です。本節では家賃保証の流れについて説明します。まずは、家賃保証契約を締結する前に賃借人になろうとする者に以下の質問をします。「現在の住所がある物件で家賃を滞納した事がありますか。当てはまるものを選択してください。選択肢1:私は現在居住している物件で賃料債務を負っている。現在まで一度も家賃滞納をしていない。選択肢2:私は現在居住している物件で賃料債務を負っている。現在まで最大一か月分の家賃を滞納したことがある。現在はすべての債務を履行し、家賃滞納はない。選択肢3:私は現在居住している物件で賃料債務を負っている。現在まで最大で2か月分以上の家賃を滞納したことがある。または、現在まで賃料債務の履行をしていない。選択肢4:私は現在居住している物件で賃料債務を負っていない。」上記の質問を記した誓約書に署名、または電子サインを賃借人になろうとする者に求めます。賃借人になろうとする者が誓約書に署名をした場合、賃借人が選択した回答に応じて、家賃保証料を決めます。または、賃借人になろうとする者に担保を求めます。または、家賃保証の拒否をします。前提として、「過去に家賃滞納した者は将来も家賃滞納する可能性が高い」としていますが、「過去に債務の延滞や不履行をした者は将来も債務を延滞したり、不履行をしたりする可能性が高い」の根拠ととなる理由や統計情報を見つけることができませんでした。しかし、銀行や消費者金融が融資の審査に過去の債務の延滞や不履行等を用いていることから「過去に家賃滞納した者は将来も家賃滞納する可能性が高い」とします。(債務を期限内に履行するインセンティブを与えることで銀行等の貸金業者のキャッシュフローの観点でメリットがあることや「将来、債務の延滞や不履行をするのか。」を「過去、債務の延滞や不履行があったか。」に質問を置き換えている可能性があることに留意が必要です。)また、本家賃保証を提案する理由に詐欺罪の適用条件が深く関わります。次は家賃滞納が生じたときの滞納について説明します。家賃滞納者が家賃保証契約締結前の質問で虚偽の回答をしていなければ、一般的な家賃滞納者への対応をします。もし、虚偽の回答があった場合は次の方法で家賃回収を試みます。家賃滞納が生じた場合、支払い督促等の手続きには費用がかかります。また、家賃滞納者が支払うとも限りません。家賃支払い期日から一定期間後、「詐欺罪」で警察に被害届を提出します。なお、被害届を提出するまでに複数回、電話や郵便で家賃の支払いを求めます。詐欺罪が適用されるにはいくつかの条件があります。刑法第二百四十六条第一項には「人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。」と記されています。つまり、誓約書の質問に虚偽の回答をして人を欺き、家賃の建て替えをしている場合は詐欺罪が適用できると考えられます。また、「詐欺罪」の被害届け出は取り下げることができます。被害届け出を提出後、家賃滞納者と示談交渉をします。示談条件は「賃貸借契約の解除と賃料債務の履行」です。示談が成立しなければ、警察に任せます。示談成立した場合は、被害届を取り下げます。以上が「過去の滞納と誓約書を用いた家賃保証」です。

前節の家賃保証の意図

本節では「過去の滞納と誓約書を用いた家賃保証」の意図について説明します。これまでの記述からわかる通り、追い出し条項の否認により最も不利益を被るのは低所得者であるが家賃を滞納しない優良な賃借人です。過去の滞納状況を用いることにより、家賃を滞納しない優良な賃借人を取り残す事がありません。また、過去の滞納状況で家賃保証料や担保を変動させることにより、公平な家賃保証料の負担を実現することができます。これにより、優良な賃借人が負担する家賃滞納リスクを減らすことにつながります。以上から追い出し条項の否認と家賃保証会社が賃借人から連帯保証することを受託し、賃貸人と保証契約を結ぶことで、住宅確保要配慮者の中でも特に低所得者が賃貸住宅を賃借しやすくするという社会的役割を果たすことの両立が可能となります。

賃料債務に特化した信用情報DB

本節では家賃債務に特化した信用情報DBを提供する全国賃貸保証業協会の説明をします。この信用情報DBは低所得者であるが家賃を滞納しない優良な賃借人の住宅確保に良い影響を与えると考えています。この信用情報DBには会員が対象の家賃保証をした場合、債務が消滅したときから5年間登録されます。ここからわかる通り、この信用情報DBは追い出し条項の否認と低所得者の住宅確保を両立する者であることがわかります。しかし、課題もあります。全保連など名がある保証会社が会員となっていますが、家賃保証大手のフォーシーズや住宅ローン保証大手の全国保証は会員ではありません。そのため、これらの保証会社と保証契約を結び、家賃や住宅ローンを期日に支払っていてもその情報は登録されません。また、フォーシーズや全国保証は全国賃貸保証業協会の信用情報DBを使って審査を行いません。それだけでなく、家賃保証会社を使わない貸主も信用情報に登録することもできず、信用情報DBを活用することもできません。多くの貸主や家賃保証会社が信用情報DBを活用することができなければ低所得者の住宅確保につながりません。今後は多くの貸主や家賃保証会社が活用できるような制度にすることによって低所得者の住宅確保につなげることが求められます。